スポーツ,AKA,仙腸関節,梨状筋

スポーツそのものが、体に良いという話は現代においては常識のように思われているふしがあります。
しかし、スポーツにより様々な障害に悩まされている方がプロ、アマチュア問わずに増加して来ているのも事実です。
「適度な運動」は体に良いと良く言われるところですが、どの程度が適度なのか本当のところは誰にも分からないというのが真実ではないでしょうか。

一時、ジョギングブームがあり今でもジョギングの愛好者は世界中に沢山いらっしゃるようですが、ジョギングの提唱者がジョギング中に亡くなっていたという嘘のような本当の話を皆さん御存知でしょうか。ジョギングの教祖ジェームズ・フィックス氏は52歳でジョギング中に急死しているのです。こうした事実を知ってしまいますと、ジョギングのどこが体に良いのか?と考えさせられてしまうのです。

また、以前エアロビクスを教えていらっしゃるというインストラクターの女性の患者さんがいらっしゃいましたが腰、膝、足首、肩、頚などボロボロの状態で仕事をなさっているような状態でした。私もあまりの状態に思わず「エアロビクスのどこが体にいいんだろうね。教える立場で毎日やっていらしたらどんどん健康にならなくちゃいけないのに、体はどんどん壊れて行っているんだものね。」と言ってしまったことがありますが、彼女も返す言葉も無く「そうですね・・・・」と申し訳なさそうに小さくなっていらしたのを今でも覚えております。

スポーツの素晴らしさばかりが喧伝される今の時代に、若い頃からスポーツで活躍された方達に早死にする方が多いと言う事実を統計的に研究されて「スポーツは体に悪い。」と言う衝撃的な研究結果を発表されているお医者さんがいらっしゃるのです。発表された当時はかなり衝撃的な話であり大変話題にもなりました。この研究成果を無視するのは簡単ですが、実際に起きた事実を元に出された客観的な事実に基づく研究成果だけに説得力のある話だとは思いませんか。

歴史的な事実を考えましても、例えば中世の頃鎌倉時代あたりの日本人の平均寿命はおそらく30代位であったろうと推察出来ます。その頃に、なんと80代、90代までも長生きをされていた人たちの特定の集団があるのです。そうです。僧侶の方達です。粗食をし今で言うところのベジタリアンのような生活をされ、一日の殆どを座禅に費やす日々を送っていた方達です。言ってみれば極端な運動不足と思える方達の集団です。彼らが、健康維持の為にお経を読みながら境内を毎日ジョギングしたり、有酸素運動をして体を鍛えていたなどという話は聞いた事がありません。ちょっと極端な事実を思い浮かべて見ると真実が透けて見えてくることが良くあるのではないでしょうか。

よく患者さんから「先生、運動不足で何か運動した方が良いのでしょうか。何か良いものありませんか?」と尋ねられます。運動不足恐怖症と言っても良いような現象が世の中にはどうも蔓延してしまっているようなのです。そんな時は、「30過ぎて、あなた運動してますか?と問われてハイ!と自信を持って答えられる人など殆どいないと思いますよ。無理をしてまで急に特別な運動をする事など止めたほうが良いと思いますよ。おそらく3日ともたないですからね。もし、何か継続的にやりたいとおっしゃるのならば健康法として「太極拳」を私は一番お薦めします。深い腹式呼吸とゆっくりとした動きこれが一番体にとって負担が少ないですし、異常な活性酸素の発生を防ぐ事が出来ると思います。だからこそ、4000年以上にも渡って中国で守り続けられて来ている健康法なのです。

息を詰めて必死に体を動かすような運動は高齢になる程避けた方が心臓や脳の為にも安全だと思います。後お薦めなのは、少し大股で歩くウォーキング程度ですね。これも、息がはずんできたら無理をしないで直ぐにペースを落としてお散歩程度にとどめるようにしてくださいね。」とお話をさせていただいています。重要なのは、絶対に無理をしないことそしてむきになってやらないことだと思います。

過剰な運動は、体の中に万病の元と言われる活性酸素を異常なまでの量を発生させてしまいます。(エアロビクスのような有酸素運動は体に良いからどんなにやっても良いという事にはならないのです。)スポーツにおける負の要素としては、これが実は一番重大な問題だと近年言われるようになりだしました。先程、お話をしました鎌倉時代の僧侶の方達が長生きされていた一番大きな原因が不必要な活性酸素を食生活や日常の行動から体の中に発生させない生き方を無意識のうちにされていたと考えれば納得出来る話ではありませんでしょうか。また、「スポーツは体に悪い」という研究成果を発表されたドクターもこの点を重視し指摘されているのです。同じ動物でもネズミのように小型で絶えずちょこまかちょこまか動いているような動物は寿命が短いです。しかし、象のように大きな動物はゆったりとした動きで生活をしています。寿命はネズミの何十倍もあります。ここにも、活性酸素の発生量の問題が必ず絡んでいるものと思われるのです。どんな良いと言われる事でも、「過ぎたるはおよばざるがごとし」ということを胆に銘じるべきではないかと思わざるおえないのです。スポーツと健康のあり方にも古人の智恵は脈々と生きているように思えてなりません。