民間療法,無資格,違法行為

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第14回 臨床レポート

テーマ 「民間療法被害」

今回のテーマは、私にとりましても実に陰鬱な気分になってしまうテーマです。やり場のない、腹立たしさと怒りを感じないわけにはいかないのです。

現状では、「無資格で思い立ったその日から誰でも出来る。」状態の民間療法を単独で取り締まる法律が無いために完全に野放しのような状態になっております。それを良いことに、「何でも治る。」などという誇大な宣伝をして困っている患者さん達を結果的にはペテンにかけるような事件が起きてきております。近年では、指圧、マッサージの国家資格免許を持つ有資格者にしかおこなえないはずの分野に堂々と無資格者の方達が入り込み、指圧、マッサージが民間療法の中で堂々とおこなわれるまでになってきているのです。(無資格者がおこなっている整体やカイロなどの治療院内でマッサージや指圧の真似事が、当たり前のように行われている話は良く耳にするところです。実際に体験された方も沢山いらっしゃるのではないでしょうか。)驚くべきことに、近年ではマッサージを教えると称する無資格者の方が作ったスクールまで出てくるような始末です。(本来は、厚生労働省の認可が必要なのは言うまでもありません。)

とどまるところを知らない常軌を逸した違法行為の常習化に対して我々有資格者は、なす術も無いというのが現状です。いくら国に抗議しましても、行政があまりにもいい加減でおざなりな対応しかしないために、遵法精神が全く守られていないのが現状です。また、次々と新手のものが現れては闇に消えて行くというような民間療法の状況では実態が全くつかめない状況にもあります。これでは、行政も動きようがないということも確かにあるとは思うのです。しかし、国民の健康を守る義務があるはずの行政のあり方が今のままでは、民間療法による被害が増えることはあっても決して減ることは無いと言わざるおえないのです。どこかの時点で、政治的な大英断を下さない限りはこの問題は永遠に解決しないと思うのです。

こうしたでたらめな状況は特にこの20年位の間にエスカレートの一途を辿っています。特に酷い例としては、10年程前でしょうか、TVの番組に中国の気功師と称する女性が度々出演し気功で難病でも何でも治してしまうような誇大な宣伝をしたことがありました。朝のワイドショーの中で連日取り上げたために大きな社会現象にまでなってしまいました。しかし、結局は、ただ只単なるやらせによる「詐欺事件」でありTV局も気功師も訴えられ裁判になるという大事件がありました。

大変な事件であったということは知っていても、まさか直接被害に合った方にお会いするとは私も思ってもいなかったのです。世間は広いようで狭いものでして、以前その気功師の女性に直接治療を受けたことがあるという、慢性の関節リウマチで苦しんでいらっしゃる患者さんを治療させていただいたことがあるのです。その方もしみじみおっしゃっていました。「今思い出しても、本当に腹立たしく強い憤りを覚えます。TV番組であんなに大々的にやっていたから私もすっかり信用して大金を払ってしまったんです。結局は治りませんでした。騙されたんですね。」と。病気で困っている方達の足元を見る様なこうした卑劣な犯罪が無くなってくれることを祈るのと同時に、我々医療に関わる者達が真実をしっかりと伝えて行く重要性を強く感じる出来事でした。

どうぞ、皆様も「行って見よう。」と思われる治療院がございましたら、自分を診てくれる直接の先生が日本国の国家資格免許を持っている医療従事者なのかどうかを必ず確認することを忘れないでいただきたいのです。また、異常に高すぎる治療代、異常に安すぎる治療代も、治療の中味や治療院の立地条件、働いている従業員の数から類推して、不自然に感じる時や胡散臭さを感じる時は、気をつけた方が賢明かもしれません。

また、マスコミなどでよく紹介をされているから良いものだと頭から鵜呑みにしないでいただきたいのです。御自身の力で、まずなるべく多くの客観的なデータを集める努力をなさるようにしてください。特に、「曲がっている、歪んでいる、ずれている」というような言葉を使って盛んに患者さんを説得にかかるような治療方法は要警戒です。曲がって、ずれて、歪んでいるのは極自然なことであって定規で測ったように真っ直ぐな人など最初から存在するわけがないのです。どれだけ曲がって、歪んで、ずれているといけないのか、誰にでもあてはまる診断基準などあるのか、個人差はどうするのか、と少し考えただけでも矛盾だらけの話なのです。それを痛みの根拠にしてしまったら生きている人は全て、特に高齢者の方は、痛みでのた打ち回って病院が彼らで溢れ返ってしまい困り果てた状態になってしまっているはずです。そんな話を聞いたことがあるでしょうか。また、少し曲がったり、歪んだだけで痛みを発するような軟な肉体であったなら、この過酷な地球環境下において、百万年以上にも渡ってホモサピエンスがここまでの繁栄を手にすることなど出来るわけがないのです。いかに現実を無視した、バカげた話であるかということを知っていただきたいのです。

また、よく人から「あの治療院良いから、騙されたと思って行ってごらんなさいよ。本当に良いから。」と言われる機会があるかと思います。しかし、当院にいらっしゃる患者さんの中にはその言葉を信じて行ったら、本当に騙されてしまいました。という笑うに笑えない状況に陥ってしまっている方が沢山いらっしゃるのです。人間関係が壊れるのを恐れて人知れず悔しい思いをされている方が沢山いらっしゃるという現実を知っていただきたいのです。善意の気持ちが悲劇を招いてしまっている場合もあるのです。自分が当たったからと言って人に宝くじを買わせてその人も当たるとは限りません。実は、それとほとんど同じ次元の話の中で起きている事件なのです。

行かれた方のお話をうかがいますと、ほぼ全てが、上記にありますような「曲がってる、ずれてる、歪んでる」の類の民間療法を受けた方達なのです。再三指摘させていただいていますが、たまたま良い結果が出ただけの関節の治療のマジックの他人の成功話を信じたが故の悲劇と言わざるおえないのです。関節に人間の感性で制御出来ないような大きな力を瞬間的に加えるような治療方法は特に危険です。壊される時は一瞬ですが、最悪の場合は一生涯苦しむような障害を負わされないとも限らないのだということを決して忘れないで頂きたいのです。関節を矯正できるなどと思っていること自体が幻想であり、技術だけで人が治せると思っていること自体がとんでもない思い上がりであるということを人の体の治療に関わる者はもっと自覚すべきだと思うのです。民間療法が問題なのは、それ以前の法的、医学的な多くの問題が未解決のまま存在していることにあります。また、正規の医学よりもはるかに優れているようなでたらめな誇大宣伝をしても強制的に治療院を閉鎖させることが出来ない状況にあることも、何も知らない一般の方々を被害に合わせてしまう機会をますます増やす結果となっているのです。

彼らの言い分の中で、よく「職業選択の自由がある以上、我々のやっていることを非難することは出来ない。」というようなことが言われます。このような人の健康に直接関わる重大な問題を含むケースの場合、それが果たして妥当な申し開きであるのか否か、常識的に判断すれば単なる詭弁に過ぎないことは明白だと思うのです。法の不備と行政の怠慢を逆手に取った単なる開き直りとしか思えないのです。世界的に見ても、少なくとも先進国と言われる国において今の日本における民間療法のあり方は、極めて異常であり「人権侵害行為が堂々と商売にされ野放しになっている。実に野蛮な国だ。」と嘲笑されても仕方のない状況にあることだけは確かなのです。

今回のテーマに関しての事例は、山のようにありましてどの事例を取り上げようか本当に迷った次第です。かなり特徴的な事例を何件かお知らせしたいと思います。

東京都在住 Nさん(50代) 男性

初めていらした時は、腰痛を訴えていらっしゃいました。
治療を進めて行く内に突然、「実は、冬場になって寒くなってくると両足の股関節が痛むんです。」とおっしゃるのです。「何か怪我でもされましたか?」とお尋ねしますと「そうじゃないんですよ。」とおっしゃり理由を説明してくださったのです。

数年前に、整体に行き腰痛の治療をしてもらったのだそうです。そうしましたところ、「この腰痛は、股関節からきていますよ。」と言われて散々両足を引っ張られたのだそうです。それ以来、疲れたり寒くなると股関節が痛むようになってしまったのだそうです。「それは、治療を受けたのではなくて明らかに壊されたんですね。」と申し上げますと「私もそう思います。本当にバカな所に行ってしまったものだと反省しているんですよ。最初から、先生の所に来ていれば問題なかったのになと思います。」とおっしゃっていました。

Nさんは、とても熱心な方で2週間おきにきちんと3ヶ月程通って来ていただけたのです。そうしましたところ、股関節の痛みも殆ど出無くなり毎朝の散歩にも差し支えが出なくなったと喜んでいただけるまでに回復されました。それい以後は、おかしいなと思うと直ぐにいらしていただく程度で、2~3ヶ月に一度いらしている程度です。まだ、Nさんの場合はどうしようもなく破壊されてしまった訳ではありませんので本当に良かったと思うのです。

宮城県在住 Nさん(50代) 女性

初めてお電話でお問い合わせをいただいた時は、お嬢さんが代理でお電話をくださいました。ちょっと東北訛りのやさしいお声の感じがとても印象的でしたが、大変切羽詰って困っているというお気持ちがひしひしと伝わって来るお話の内容だったのです。

仙台から少し離れた所に御住まいとのことで、いくら今の時代は新幹線があるとは言え、東京までいらしていただくのに朝起きてから準備の時間も入れると6時間位はかかる所にお住まいのようでした。しかし、お嬢さんのお話からは「とにかく、腰痛で苦しんでいる母を楽にしてあげたい。」という必死の思いが伝わってきたのです。お電話をいただいた週に直ぐいらしていただける旨をお伝えしますと「あ~良かったです。こんなに早く治療が受けられるとは思いもしませんでした。」とおっしゃるのです。ネット上の腰痛関連の掲示板などで情報を集められて、JMIしかないと思われたようで予約がことの他早く取れたことで心から喜んでいただけたようなのです。

しかし、患者さんを受け入れる私に取りましても責任重大です。電話を切った後からは、実際にはどんな症状なのだろうか、ひょっとして真性のヘルニアではないだろうか、そんなに遠くからわざわざいらしていただくのに満足して帰っていただけるだろうか、と言った様々な思いが交錯しました。しかし、信じていらしていただく人がいる以上は己の全てを出しきってなんとかお役に立てたらという思いで一杯になったのです。

いよいよ、Nさんにお会いする当日が来ました。予定の時間よりも少し早めにいらっしゃっいました。治療院のドアの向こうでザワザワと人の気配がしましたので「随分、大人数でいらしたのかな?」と思いドアを開けますと、御本人は車椅子に乗られ、御主人様、お嬢さん、息子さんと御家族4人総出でいらしていただいたのです。お嬢さんは、現在妊娠中とのことで身重な体でありながらお母様を気遣ってわざわざ同行してい頂いたとのことでした。JRには、車椅子で移動する旨を伝えて各駅毎に駅員さんが待機して階段の上り下りを全て援助してくださるという手厚い援助をしてくださったのだそうです。本当にありがたいことです。

ご家族がここまで期待を込めて、遠方からいらしていただいたことに本当に私も感激いたしましたしなんとかしてお役に立たなくてはという思いが強くこみ上げてきたのです。早速にお話をうかがいますと、整形外科では骨に異常は無いとの診断を既に受けているとのことでした。きっかけは、2ヶ月前に、朝起きた時にギックと来てから腰痛が全く消えなくてホトホト困ってしまっているとのことでした。地元で良いと言われた整体にはずっと通ってみたものの、特に良くなることもなくどうしたのものかと困っていらしたようなのです。

車椅子から降りていただき、治療のベッドまで移動するだけでも大変な様子で、「これは、かなり炎症も酷いのでは?」と思われました。そして、最初の検査を始めた時でした。右足を少し上げただけで「痛い。凄く痛いです。」と顔をしかめられたのです。左足はそうでもないのですが、右足を上げると異常に痛みを訴えられたのです。これは、かなり仙腸関節の炎症と機能異常が起きているからかなとその時はそう思っていたのです。

とりあえず、仙腸関節の治療を慎重に行い炎症を引かせる為に徹底的に電気治療を施しました。初回の治療はこれしかないという感じだったのです。90分程かかりましたが、なんとか少しまともに歩けるようにはなられました。遠方からではありますが、3週続けて息子さんがわざわざ会社の休暇を取られて御一緒に来院していただいたのです。3回目にいらしていただいた時に右の股関節の強烈な痛みの真相が分かったのです。いつものように仙腸関節の治療をした後に、足を上げる検査を始めましたら、以前とは違って右の股関節の特定の部分の痛みだけを強く訴えられたのです。私も「あれ?おかしいな。仙腸関節の炎症は殆ど引いて機能異常も取れているのに、これは股関節周囲の単独の炎症じゃないのかな?」と思ったのです。そこで、「Nさん、通っていらしたという整体でどんな治療を受けましたか?」とお尋ねしますと驚愕の事実を耳にすることになったのです。

「なんでも、その先生に言わせると最初は背骨が曲がっていると言われて散々海老固めのようなことまでされましたが、そのうちに股関節がおかしいし、足の長さも違ってしまっているからと言い出して、1ヶ月間、毎日のように足を引っ張られていました。」とおっしゃるではありませんか。それでやっと、原因が判ったのです。1ヶ月に渡って足を強く引っ張る治療方法など、少なくとも正規の医学を学んできた者には考えられない行為です。常識的に考えても体の一部分に強い力を長期に渡って加え続ければいかなる弊害が出てくるか想像がつくのではないかと思うのですが。

仙腸関節の機能異常は、3回目の治療で完全に取れましたのでそこから出る痛みは無くなりました。しかし、右足を動かすと股関節から単独の痛みが出るという異常の原因がこれで初めて分かったのです。そうとわかれば、局所的な炎症を押さえる治療方法に切り替えなくてはいけません。電気治療のパターンを変え、股関節のAKA治療も慎重に行い、指圧も慎重に施しました。そうしましたところ、過去2回の治療には無い治療後の軽さが体に戻って来たのです。治療の翌日、朝起きた時から快調で走ろうと思えば走れそうな位に下半身の軽さが戻って来たと後日おっしゃっていました。これは、Nさんが本来とても強い回復力をお持ちだからこそ、ここまでの短時間で改善がなされたのだと思います。

4回目の治療からは、お一人で杖で体をかばいながら、普通に歩いて東京まで出ていらっしゃったのです。遠方から初めてお一人で来院された御姿を拝見した時は本当に嬉しかったのを今でもはっきりと覚えております。初回の症状からしますと、もっと時間がかかるかなと思っていただけに喜びもひとしおでした。Nさんが、腰痛の回復をここまで急ぎ、焦っていたのには大きな理由がおありになったのをその時初めてお聞きしたのです。「実は、今月の後半の土曜日に甥の結婚式が都内であるんです。それになんとか間に合わせたくて焦っていたんです。まだ、杖が無いとちょっと心配ですが、これでなんとか出席出来る目処がついて本当に嬉しく思っています。」とおっしゃっていただけたのです。そして、嬉しいことに結婚式の当日都内に折角来ているから、ついでに治療もして行こうということでまた、4人御家族でお寄りいただいたのです。

それ以降は、すっかり元気になられて2週間に1度のペースでいらしていただいていました。しかし、皆様も御存知の通りH15の5月から東北地方を中心とするM6クラスの大きな地震が相次ぎました。その影響があり、Nさんの周囲でも被災した方や間接的に被害を受けた方が後を絶たず大変な思いをされたようなのです。相次ぐ訃報に連日のようにお葬式に出ていらしたとのことでした。しかし、以前のような酷い腰痛になることはなくなんとか乗り切られた様なのです。暫く、お目にかかれなかったのですが、軽いギックリ腰を再発されて直ぐにまたいらしていただきました。Nさんがおっしゃるには、「以前では考えられない位に、今回のギックリ腰は後が楽でした。これは、AKAの治療を事前に受けていなかったら絶対にありえないことだったと思います。本当にありがとうございます。」と喜んでいただいたのです。

その後は、月に1度のペースでいらしていただいていますが、お嬢さんが御出産をされ赤ちゃんの面倒を見ながらの生活で疲れるとやはり腰痛が出てくるとのことです。「おかしくなれば、いつでも先生の所にとんでくれば良いと思うと安心です。」とおっしゃっていただいています。Nさんのケースは、初めはギックリ腰であったのですが、その後の治療が適切でなかった為に2ヶ月近くに渡りつらい思いをすることになってしまったのです。

ここにも、大きく民間療法の抱える問題が横たわっているのです。診断が出来ない、検査法も検査基準も持たない。無い無いづくしの上に思い込みで患者さんを治療と称していじりまわすことの恐ろしさを感じないわけにはいかないのです。最悪のケースは、患者さんが本来受けるべき適切な治療を受ける機会を奪ってしまうことにもなるのです。Nさんを診た整体の先生は「Nさんの腰痛をなんとかしたいと思って日々方法を考えているんです。」などと殊勝なことをおっしゃっていたようですが、結果がこれでは患者さんは泣くに泣けません。患者さんを診てどういう治療をしたら適切かが分からないで治療らしきことをしてしまうことこそが一番の問題だと思うのです。また、民間療法そのものが、そういう危うい存在であるということがきちんと世間に宣伝されていないことにも問題があります。この問題は、マスコミのあり方にも関わってくる重大な問題だとも思います。健康に関する情報は、本当にそれが正しくて適切なものであるかどうかをなるべく多くの客観的な事実から、しっかりと調べる必要性があると思うのです。Nさんの場合は、その役割をお嬢さんがしっかりとやってくださったことが今回の幸運なケースに繋がったと思うのです。

しかし、Nさんとの出会いから一番感銘を受けましたのはその大きな「家族愛」です。御家族が本当に一つになって家族に起きた問題に向かっていくその姿に心から感銘を受けました。御家族の皆さん一人一人が本当に素直で大きな優しさを持った素晴らしい方々です。「家族とはかくありたい。」と思わせる素晴らしい愛情一杯の御家族に出会えて私も心から嬉しく思いましたし、接していて皆さんのその素朴なお人柄に御家族の一員に入れていただけたような喜びを感じました。「先生、仙台には美味しい所が一杯あるんですよ。是非、一度遊びにいらしてくださいよ。家の一家は皆グルメなんですよ。」と言っていただけるだけでも感激してしまいました。いつの日か、Nさん御家族とプライベートで楽しい一時を過ごせる機会があればと思っているところです。

東京都在住 Sさん(60代) 女性

Sさんとの出会いは、実に唐突でした。治療中に突然御主人とお二人で入っていらしたのです。当院は予約制になっているので、まず突然患者さんが入っていらっしゃるようなことはありません。私も、ビックリしたのですが治療中の患者さんが終わるまで暫く待っていただくことにしました。

30分程して、やっとお話を窺うことが出来ました。「予約制とは知らずに、突然うかがってしまいましてすいませんでした。実は、こちらの治療院の前のマンションに住んでいらっしゃる方からとても評判が良いからと薦められて参ったんです。」とおっしゃったのです。めずらしいこともあるものだと思いましたが、何かご縁があったのであろうと思わずにはいられませんでした。

そこで、お話を聞きだしますとそれはそれは遠大なお話で、腰痛を感じ出してからの十数年間ありとあらゆる民間療法を御試しになって来たとのことだったのです。中には怪しげなおまじないのようなものから、乱暴に体を扱うものまで凄まじいまでの経験をなさってきたようなのです。御主人様が、不動産業をなさっていて奥様はそのお手伝いをしなくてはいけない関係上、どうしても一日中外出して歩き回ることが多いとのことでした。その上、右足の足首を怪我してから足首が内側に曲がったままになってしまっていることもあり、きちんと歩けない為にどうしても腰痛になりやすくて困っているとのことでした。お二人で外出なさっても、奥様が時々休みながらでしか歩けないので、いつも御主人様が気遣いながらの大変な御苦労があるとのことでした。

御主人が「この足首もどうにかなりませんか?」と御尋ねになりましたが、私の力でどうにかなる時期を既に越えてしまっている状態でしたので「残念ながら、私では力が及ばない状況だと思います。」と申し上げるしかありませんでした。「しかし、腰痛の方はまず正確な仙腸関節の異常を治すことでなんとか出来ると思いますので諦めずにいていただきたいのですが。」と申し上げました。AKAに関するお話を差し上げましたところ御主人が「先生、こんな凄い理論と治療法があるならお医者さんが皆やれば良いのにね。」とおっしゃいますので「そうは行かない所が、医療の世界たる所以なんですよ。」と申し上げたのです。思わず御主人も絶句され、大きくため息を突かれて頭を抱えておられました。

早速に治療に入りまして、左右の仙腸関節の機能異常を取ることにしました。ものの数分でしたが、治療をしていてかなり手応えを感じましたので「どうぞ、立って感触を確かめてみてください。」と申し上げました。そうしましたところ「あら~、痛くないわ。こんなに足が軽く動くのは久しぶりですよ。あなた、見てホラこんなに軽くなっちゃったのよ。」と奥様は喜びいさんで待合室の御主人の所に駆け寄って行かれたのです。御主人もあまりにも短時間での出来事に目を白黒させていらっしゃいました。治療後にお話をさせていただいたのですが、「自分で納得して、信じてやって来たこととは言え。今までの十数年間の治療はいったいなんだったのかと言いたいですね。やはり、本当の医学的な治療をすればこんなに早く楽になれたんですよね。私の、この右足もしっかりとしたリハビリをして下さっていれば曲がったままにならずに済んだかもしれませんものね。」と悔しそうにおっしゃっていたのがとても印象的でした。

来院された時は、足を引きずりながらいらしたのですが帰りは御主人を置いて行きそうな勢いでサッサと歩いてお帰りになられたのです。今でも、Sさんはきちんと2週間おき位のペースで来院されております。外出するお仕事が多くなるとどうしても腰痛が戻ってきてしまうので、予防と治療を兼ねていらしていただいているところです。

神奈川県在住 Hさん(40代) 女性

Hさんは、御自身が受けた民間療法に疑問を感じ当院を探し当てていらした方でした。Hさんが受けていらした治療方法は、言って見れば「気功」と称するものの類です。近年よく見かける治療法ではありますが、芸能人やプロのスポーツ選手が良く通っているという有名なものだったのです。たまたま、私も週刊誌や写真雑誌等で見たことがあるものでした。偶然にも、それをやっている先生の奥様とHさんがお知り合いだったことから、御自身の腰痛をなんとかしたいと思い奥様を通じて頼み込み治療を受けることになったのだそうです。

実際に、治療を受け始めてみると大して効果があるとは思えず、数回受けた時に思い切って「先生、申し訳ないのですが腰痛の痛みは一向に変わらないんですがどうしたのものでしょうか。」と相談したそうです。そうしましたところ「あなたの腰痛は、難しくてやっかいだから、これはもう治らないよ。」と突き放されたとのことなのです。治療者からつっけんどんにそう言われてしまっては患者さんとしては立つ瀬がありません。それで、行くのをやめてしまったとのことでした。

こうした話は実によくある話でして、一種の心理療法に近いことをやり痛みを感じなくさせてしまうというマジックのようなものなのです。うまくいった場合は、特に内科的な病気の場合、本人が治るという意欲が湧くことに繋がり、病気を自分で克服する力が増して本当に治ってしまうこともあるのです。いかに人間は気持ちの持ち方でいかようにでも変化する生き物であるかを端的に物語る話でもあるのです。話を戻しますが、手法がなんであるにせよ、痛みが引けば患者さんは喜んで帰られます。その上、治療者が人当たりが良く、会話も上手な方であれば、評判にもなるでしょう。しかし、Hさんのように心理的な療法にはなじまない方の場合はどうしようもなくなってしまうのです。ましてや、物理的に体が壊れていて痛みを発している以上は、心理療法で誤魔化すことが出来る範囲は限られてしまうことは言うまでもありません。

そこで、早速に治療をさせていただきました。拝見しますと、やはり単なる仙腸関節の機能異常が原因の実によくある腰痛のケースでした。一度で驚くほどに痛みが消えてしまいHさんも呆気に取られていらっしゃいました。「じゃあ、結局私は騙されていたことになるのでしょうか?」とおっしゃいますので「解釈の仕方によってはそう とも言えます。しかし、その治療で満足している方もいる以上はっきりとインチキとも言えないところが難しいところなんですよ。時として心理的な効果で病状が一気に良くなってしまうことも無いとは言えませんからね。また、法的には人の体に直接手を触れて無資格でマッサージのようなことをするわけでもなく、只手をかざしているだけですからマッサージ法違反でも摘発は難しいのです。Hさんの場合はとても精神的にしっかりされていて、論理的に物事を考えられる心の余裕があったから効かなかったと解釈されてもいいんじゃないですか。」と申し上げたのです。

「しかし、はっきりしていることが一つあります。人の体に手も触れないで腰痛を治すということは、既に関節運動学に基づく治療法が医学的に明らかにしていますように、腰痛の重要なポイントである仙腸関節に手を触れないで動かして治療するということになります。常識的に考えてそのようなことが、可能だと思いますか?もし、可能だというならば物理の法則なんかぶっとんでしまいます。スペースシャトルが宇宙に行っても帰ってこられなくなってしまいますよ。そう考えれば、答えは見えてくるのではないでしょうか。」と申し上げました。Hさんも全てを悟られたようでウンウンと大きく頷いていらっしゃったのです。

確かに、どのような治療を受けようとそれは患者さんの自由ですし、自己責任の中で処理されているならなんら他人が口を挟む問題では無いと思います。確かに、痛みでなやまされどうしようもなくなれば、藁をもすがる思いで人から良いと聞けばなんでも試してみたくもなるでしょう。しかし、今一度冷静になって常識的に物事を判断する論理的な思考回路を正常に戻していただきたいのです。医療の世界だからと言って 決して世の中の常識から逸脱するものではないからです。なぜならば、所詮、人間が作り出した物であり、3次元の世界で起きていることだからです。奇跡が起きるとすれば、それは患者さんの心のありようが奇跡を呼ぶのだと思います。治療する側が自ら「奇跡の治療法です。」などともし言っているようなことがありましたら、「そのような方法で、治るのが奇跡だという意味だな。」と笑い飛ばして近づかない方が賢明だと思うのです。

[ワンポイントアドバイス]
近年、気功と称する治療方法がちまたでは良く見られるようになってきました。本来は、自らの体の中で呼吸法を使って「気を練る」という操作をし、自らの健康維持に役立てることをいうものなのです。「内気功」と呼ばれるものしかありませんでしたし、これが、中国で4000年以上に渡って受け継がれて来たものです。太極拳がまさにそれです。その他気功法として様々なものが編み出されているようです。しかし、この30年程前から突如として中国の方から「外気功」と称するものが入ってくるようになりました。自らの中で気を練るだけではなく、他人に向けて気を発射するというものです。果たしてそのようなことが可能なのかどうか?医学的には未だにはっきりとしたことは判っておりません。また、「気」というもの自体がなんなのかさえはっきりと判っていないというのが現状です。少なくとも、他人に向かって気を発射するというアイデアはつい最近のものであるということだけは確かです。それまでも、含めて中国4000年の歴史と言ってしまうのはいささか乱暴過ぎはしないでしょう。また、現代の中国における医療はあくまでも西洋医学が主となっています。中には、外気功を取り入れた治療をしている所もあるやに聞いておりますが、あくまでもそれは極めて例外的なケースととらえられているようです。日本のマスコミなどで面白おかしく取り上げられることがありますので、中国では東洋医学が中心で外気功まで普通にやっているかのような錯覚をされている方が沢山いらっしゃるかもしれません。(以前、NHKの番組でもそのように誤解されてしまうような番組が放映されてしまい、後日謝罪したという事件がございました。)しかし、実態はそうでは無いということを知っておいていただきたいのです。気功治療を取りまく背景に、そんな裏事情があるということを知識として頭の隅にでも入れておいていただけましたら嬉しく思います。

東京都在住 Hさん(30代) 男性

Hさんとは、たまたまプライベートな場で知り合った方でした。
お酒をご一緒しながらお話をしていましたら、「首が以前からおかしくて、是非機会がありましたらうかがいます。」とその時おっしゃっていらしたのです。しばらくして、ご連絡を頂きまして治療をさせていただく機会をいただいたのです。

改めてお話を聞いてみると、「これは、明らかな民間療法による被害だ。」と思わずにはいられない話だったのです。首の調子がおかしくなる一番大きなきっかけは、とある整体に行き首を捻られてからだとおっしゃるのです。実によくある話です。その後、よく通っていた床屋さんでまたおかしなことをされてしまったとおっしゃるのです。なんでも、散髪が終わった後にお客さんの首を捻ってコキコキと鳴らすのが床屋の主人はサービスのつもりのようでいるらしかったのです。Hさんも、行く度にそれをやられて「妙なことをするな。」とは思ったもののある時を境にそれをやられたことで首の状態がかなり悪化してしまったのだそうです。それ以来行くのはやめられたそうですが、今でも毎日仕事をしていて夕方になると首から肩の周囲が病めるような重苦しさが襲ってくるとおっしゃるのです。

Hさんのお話を聞いているうちに私もだんだん怒りが込み上げてきました。人の体に触れることの怖さを知らない人達は本当にとんでもないことをしでかしてくれるものだと思わずにはいられないのです。ましてや、床屋さんでどうしてそのようなことをしなくてはいけないのか、本来の業務と何の関係もありません。Hさんのお話からもかなり腰も痛めていらっしゃるなと感じましたので、取りあえずは仙腸関節の異常を治すことから始めましょうということで治療に取り掛かりました。

やはり、仙腸関節の機能異常が起きていましたし、肩の周囲に重大な異常をもたらす肋椎関節にも機能異常が起きておりました。その後に、異常を訴えておられた頚椎の機能異常も合わせて取り除く治療をおこないました。全工程はものの15分位の間でしたでしょうか。「いかがですか?」とお尋ねしますと「あっ、良いですね。あっ、肩も首も凄く軽くなりましたし、可動域が凄く広がりました。楽ですよ。ありがとうございます。」と大変喜んでいただいたのです。

いかに、民間療法でおかしなことをされていたかということをHさんも自らの体験でよくご理解いただいたのです。首は捻っても治りませんし、首だけいじっても直ぐに痛みは戻ってくるのです。大元の仙腸関節が正確に治せなくてはお話にならないということをまさに証明したような出来事だったのです。

埼玉県在住 Sさん(40代) 男性

Sさんは、H16年夏から腰痛治療にいらして頂いていた患者さんでした。
整形外科では、腰椎すべり症だと診断されそれなりに治療を続けていらしたようですが、芳しい成果が得られずに困っていらしたのです。お好きであった、テニスも出来なくなってしまいたまたまインターネットで当院を探し当ててくださったのです。

治療を開始した頃は、仙腸関節に炎症もあり機能異常もかなり強い状態でした。しかし、3回目の治療が終わった頃から急激に症状が改善され、4回目以降は余程体に負担をかけない限りは腰痛が酷くなることはなくなってしまわれたのです。Sさんも大喜びされ、お好きであったテニスも再開することが出来るようになられたのです。

ここまでのお話しであれば、当院では日常的に起きている通常の腰痛治療の経過であったのですが、Sさんの場合はここからが違ったのです。

H17年に入ってから、暫くSさんにお会いする機会が無くなってしまいました。後でお話しをうかがったところお仕事が急に忙しくなってしまい、時間を作って都内までいらっしゃれる機会が無くなってしまったのだそうです。腰痛の方も、少し気になりだしたある日友人から近所に新しく出来たカイロの治療院に行かないかと誘いを受けたのだそうです。

Sさんも、私から民間療法に潜む様々な問題点について話を聞いていた手前「どうしようかな?」ととまどったそうです。しかし、その友人が「今度出来た、カイロの治療院の先生は有名なスポーツ選手を何人も診ているそうで、評判が良いらしいよ。」と言うものだったそうです。Sさんも、私の所にそろそろ治療に行きたいなと思っていらした時でもあり、時間が無くて都内までは中々行けそうもないと思っていたこともあり、「じゃあ、一度試しに行ってみようか。」ととまどいながらも返事をしてしまったのだそうです。

治療の内容が、カイロプラクティックですから特殊なベッドを使った関節の治療を受けられたそうです。治療を受けた直後はなんとなくスッキリしたような気がしていたのですが、夜になって左の背中や頸のあたりが異常に痛くなりだしてしまい、次の朝には左腕が少し痺れるような状態になってしまっていたそうです。Sさんも不安になり、再度治療に行き治してもらおうと思ったそうです。カイロの先生に症状を訴えたところ「え~、そうですよ。治療を受けた後は好転反応で痺れたり色々症状が出ますけども、その内に消えていって治っていくと言うのが普通です。私はそういう理論でやってますから心配しなくても大丈夫です。」と言う実にあっけらかんとしたものだったそうです。

流石に、Sさんもこの対応には大きな不安がよぎったそうです。隣のベッドで治療を受けている患者さんもSさんと全く同じ症状をしきりに先生に訴えているのをカーテン越しに耳にしてますます不安になってしまったそうです。そして、次の瞬間「これは、治しているのではなく壊されているのかもしれない。」とますます不安になってきてしまったのです。「やっぱり、白澤先生に忠告されていた通りの事が起こってしまったかもしれない。早速に、先生の所に行って治して貰わないと大変なことになるぞ。」と思い至ったとのことでした。

2ヶ月ぶりにお電話を頂いたときの、Sさんの実に申し訳なさそうな、消え入りそうな声を今でも私は忘れられないのです。気の毒な程、落ち込み後悔されている様子がひしひしと電話の向こうから伝わって来たのです。直ぐに、時間を作って頂きまして治療にいらして頂いたのは言うまでもありません。

上記の一連のお話しを聞き、私は直ぐに「これは、関節をアバウトにいじられたことでむしろ関節内に機能異常を起こされてしまっているな。」と感じました。こうした事は、決してカイロや整体の様な治療だけに起きることではなく、指圧やマッサージその他の方法でも起こりうることなのです。つまりは、関節の上からなんらかの強い力をかけることが原因となるのです。関節周囲に力を加えますと良くボキッと軽い音がすることがあります。治療している側はよくこの音がした事で「関節を矯正出来た。」と思いがちなのですが、最悪の場合関節内に機能異常を起こしてしまい、むしろ痛みが増すような逆の結果が出てしまう事が起こりうるのです。治療する側は、「好転反応」だの「ちょっとしたもみ返し」だのと言いますので、患者さんもそんなものかと思い込まされてしまっているケースが沢山あるのではないでしょうか。

良く、自分で体を捻ったりしてボキボキやるとスッキリするような気がするとおっしゃる方がいると思いますが、関節の治療をしている立場から申しますと、そのような事は意図的にあまりやらない方が安全ですと申し上げておきたいと思います。実際に、自分でボキッとやってから腰がおかしくなったり、頸がおかしくなったりして駆け込んでいらっしゃる患者さんを私も今までにも沢山拝見してきているのです。

今回のSさんのような状態になってしまった時に、本当の原因と治し方を知っているなら別ですが、残念ながら「関節運動学」をベースにした治療法は世間にまだ多く存在してはいませんので、殆どの場合は「変だな。おかしいな。」と言うような状態を長期に渡って引きずっていかなくてはいけなくなってしまうのです。アバウトな関節の治療を受ければ受けるほどにおかしくなってしまい、自主的に治療を中断しどうして良いか分からないで困り果ててしまっていると言うケースが沢山あるのではないかと想像出来るのです。

早速、Sさんの治療に取りかかりました。
暫くお会いしていなかったので、仙腸関節の機能異常も少し進んでおりました。
しかし、もっと問題だったのは、複数の箇所に渡って胸椎の椎間関節も機能異常を起こし、肋椎関節も機能異常を起こしてしまっている状態だったのです。これでは、腕が動かしにくくなりますし、痛みや痺れが出てきても不思議ではありません。余程おかしな角度から強い力をかけられたのではないかと思わせるような状態でした。

一連の操作が終わってSさんに感想をうかがいますと、「かなり楽になりました。まだ、少し違和感がありますが来たときとは比べものになりませんよ。やっぱりずぼらしないで、先生の所に来ていれば良かったです。」と安堵されたのです。次の週に再度いらして頂、治療をしましたところ、全ての症状が消えてしまいSさんにも心より喜んで頂けたのでした。

このHP上でも再三指摘させて頂いていますが、今回のSさんの身に降りかかった災いは、「多関節」に人間の感覚では制御出来ないような、強い力を瞬間的に加えるような行為は時として予測不可能なとんでもない事態を招くと言うことを知らしめる典型的な治療事故だったのです。人の体を乱暴に扱って良い事など何一つありませんし、「痛い治療ほど効くんだ。」などという誤った認識があること自体問題だと思うのです。関節内で数ミリ、コンマ何ミリと言う単位で異常をきたし、痛みを訴えているのですから、それにあった繊細で丁寧で体に優しい治療法が必要になるのは言うまでもないことなのです。関節運動は、関節が物理的に起こす痛みのメカニズムを始めて明らかにした最新の学問であり治療法であると言うことを知って頂ければ、従来からの関節の治療への取り組み方の欠点や過ちを御理解頂けるのではないでしょうか。

Sさんもしみじみおっしゃっていました。「有名なスポーツ選手も来ているからと友人が言うので、つい魔が差してしまいましたが、実際に被害に遭ってみるととんでもない事をされたんだなと実感しました。先生の事を知っていたからこの程度の事で済みましたが、知らなかったらどれだけ苦しむことになったかと思うとゾッとしますね。紹介してくれたその友人にも、今回はお前の言葉を信じたばかりにとんでもない目に遭ってしまったよ。二度とあのような所を他人にも紹介しないで欲しいし、お前も行かない方が良いよ。ときつく言っておきました。」と。

プロのスポーツ選手は、何千人、何万人に一人と言う類い希な肉体と運動能力を持った方です。そういう方の体を触るのと、極々一般の方の体を触るのとでは全く状況が違ってくるのです。
むしろ、一般の方の体を治療する方が遙かに難しいと思います。体が持つポテンシャルそのものが最初からあまりにも違いすぎるからなのです。少しばかりアバウトで乱暴と思われる治療をしてしまっても耐えられる肉体を持っている人には何も応えないかもしれません。しかし、そうでは無い大多数を占める極普通の一般の方の場合は、大変な事故に繋がる可能性がより高くなるのです。

治療の世界は、決して美味しいと評判のラーメン屋さんやフランス料理やイタリア料理のお店とは違うのです。有名芸能人やスポーツ選手が出入りしているなどと言うことと、まっとうな治療が受けられると言うことは何の関係もありません。お店の宣伝の為に単に利用されているだけと言う事も十分に考えられますし、そうした事を前面に出して集客を図る手法は、私も治療師の一人として大変大きな疑問を感じます。自らの大切な体を預ける場所であると言うことを心して、行く前に良く調べてから行くべきだと思うのです。最低限、日本の厚生労働大臣の名前の入った国家資格免許証を持っている方の治療院に行くべきだと思います。「あ~痛かった、効かなかった。」と言うような笑い話で済んでいる内は良いのですが、取り返しの付かない事故に遭わないように皆様もよくよく心しておいて頂きたいと思うのです。


 

[民間療法における頚椎治療の被害の実態]

民間療法における関節にまつわる治療の事故や被害、問題に関して私も再三忠告させていただいていますが、最近患者さんから聞いた生生しい被害の実態についてお話をしておきたいと思います。

Kさん(50代 女性)から伺ったお話です。

Kさんのお知り合いの男性が、交通事故に合いそれ以来頚の調子がおかしくて悩んでいらしたそうです。そんなある日、かつて同じ会社の先輩で退職された方からお電話がかかってきたのだそうです。その電話の内容は、「実は、退職してから整体の先生の免許を取っていよいよ開業することにしたんだよ。人づてに聞いたら君交通事故に合ってから頚の調子が悪いそうじゃないか。俺が治して上げるから是非いらっしゃいよ。」と言う電話だったそうです。

その男性も、かつての会社の先輩でもあり、一応整体の勉強をしたらしいので治してもらおうかなという気軽な気持ちで出かけられたそうです。(今の日本においては整体やカイロなどといった国家資格免許など存在しません。)しかし、それがとんでもない事件を引き起こす幕開けになるとは知る由もなかったのです。
治療に行き、頚を強く捻られた瞬間全身に電気が走りそれ以来動けなくなってしまったというのです。今でも体を自由に動かす事が出来ずまさに身体障害者のような状態になってしまい、かつての先輩後輩などという親しい関係もどこへやら裁判沙汰にまで発展してしまって大変な事態になってしまっているというのです。
加害者も被害者も、この先の人生お先真っ暗という状態に陥ってしまったのですからとても笑い事で済まされるような話ではないのです。実態は定かではありませんが、このような被害は全国でも毎年沢山起きていると聞きます。

不況の時代、リストラに合った方や退職された方が気軽に「整体」や「カイロ」などのお店を開くケースが増えてきました。それにつれてこのような事故も多発しているのではないかと思えてならないのです。現状のまま放置すれば、加害者も被害者もお互いに不幸な人生を歩む事になるケースがますます増加するのではないでしょうか。どこかで、この「不幸の連鎖」を断ち切る必要があると思うのです。

平成3年に厚生省から既に、頚を強く捻る様な治療行為をおこなってはならないと通達が出ているにも関わらず未だに平然とちまたの民間療法の現場ではおこなわれているのが現状です。「関節の治療は間違った治療をおこなえば、人の一生を狂わしてしまうような大変な事故に繋がる可能性が高いものである」という事を、マスコミの方々にもしっかりと認識し報道していただきたいと思うのです。また、民間療法による事故の実態をレポートし世の中に警鐘を鳴らして下さる、良識と勇気を持ったマスコミの方が出てきて下さることも合わせてお願いしたいと思うのです。


治療の世界は、一般の方達が外から見ていでも見えない要素が沢山隠れている世界でもあります。
大量の情報が流れている時代だからこそ、どの様な治療院、どの様な治療法を選択すべきか?
と言う事を決める意味でも重要な要素があります。是非、参考にしてみてください。


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