第6回 「足の裏治療に関する心配な現状」

近年、民間療法には「リフレクソロジー」「足もみ」と称して新手のマッサージもどきの商売が流行っているようです。いずれも、マッサージと言わないところが味噌でして、「マッサージとは言っていないから違法行為では無い。」と屁理屈を言いながらその実、マッサージや指圧そのものをおこなっているのです。大変商業主義的で胡散臭いものを感じます。言葉で逃げながらその実、マッサージや指圧そのものを無資格で行っているわけですから、我々有資格者から見ますと「どういう神経をしている人達であろうか。」と経営者の人達の人格そのものを疑いたくなってしまうのです。

人の体に直接触れる行為と言いますのは、一つ間違えるとどんな災いを引き起こすか知れ無いという恐ろしさが必ずついてまわります。「足の裏程度なら安全で簡単に商売になる。」という甘い考えがおそらく根底にあるのではと思いますが、当院にいらっしゃる患者さんの中には「足もみ」に通い詰めているうちに足が痛くてまともに歩けなくなってしまった方、それが元で腰痛が悪化してしまった方、自律神経の異常が以前よりもさらに悪化してしまった方などが実際にいらっしゃるのです。こうした一連の癒しをテーマにした産業は、対象があくまでも生身の人間であると言う事の怖さ、責任の重さを全く自覚していないと思わざるおえないのです。(やっている人達が、医療に関する何の資格も持たない素人の方達ですから最初からそれを望む方が無理なのかもしれませんが。)

先日、買い物に出た先で「フットケアー」なるお店があるのが目に入りました。ドイツ式の最新のフットケアーテクニックが売り物らしいのです。リフレクソロジーとはまた違ったもののようでして何をやっているのだろうか?と私も以前から大変興味を持っていたのです。外からガラス越しに中が見えるような店舗であったため実際にやっている所をとくと拝見させていただいた事があります。お湯で温めた足の裏に、やおら電動ヤスリなるものを取り出して魚の目やたこを削り出したではありませんか。
「ここは、金属加工の工場かそれとも病院なんですか?」と思わず看板を見直し目の前で行われているあまりに常軌を逸した凄まじい行為に暫し、呆然としてしまいました。

医師法違反行為とも言えるような、大胆不敵な行為がどうどうと街中で普通の商売として行われている事に仰天してしまったのです。また、巻き爪のケアーまでしているとパンフに書かれており「この国は、法治国家なのか?」とまるで異国の地にでもいるような錯覚に襲われてしまいました。そして、なおかつこういった行為が出来るようになるのに3ヶ月や6ヶ月程度お店の系列のスクールで訓練すれば大丈夫などと言う生徒募集の宣伝まで御丁寧に添えられているのです。人の体を削るような行為を皮膚科や整形外科の医師でもないただの素人がおこなっている事に対して呆れ返ると共に、肝炎やエイズなどをうつされる危険性を少しでも考えた事が有るのだろうかと心配になってしまったのです。全く無防備、無頓着な危機感ゼロのお客さんの姿にも心底驚いてしまったのです。

2年ほど前からようやく、エステサロンでのレーザー脱毛が医師法違反行為として認定され、時々見せしめのように摘発をされるようになって来ました。フットケアーにおけるこの「ヤスリ」で人の足を削る行為も早急に医師法違反行為で摘発すべきではないかと思った次第です。大きな事故が起きてからでは遅すぎるのです。時代の移り変わりの早さ、手前勝手な法解釈の元で次々と現れる新手の商売に対し、明らかに法整備が追いついていない典型的なケースが、癒しをテーマにする産業の実態なのです。よって、今ややった者勝ちの無法地帯と化してしまっているのです。

不況の折り、多額の税金を収めてくれる数少ない産業であるならば少しばかりの目に余る行為も多めに見ようなどと政府は考えているのでしょうか。もし、そうだとしたら人柱にされているとも知ずにそういった店に出入りしている善良な一般庶民はたまったものではありません。TVや雑誌などで面白おかしく紹介されると付和雷同的に直ぐにそのペースに乗せられてしまうことは厳に慎むべきだと思うのです。「他人の体に直接手を触れる行為、医療とみまがうような行為にはなんらかの公的な資格が必要なのでは無いか?」と反射的に思うのが普通の常識的な感覚だと思うのですが、平和ボケしてしまっている現代の日本人には望むほうが無理な事なのでしょうか。